日々の診療は我々にとって学びの場です。
2017.01.04
新年あけましておめでとうございます!
今年最初の初ブログです!!!
昨年を振り返りながら、何を書こうかと迷っていたところ
少し診断に困った患者様についてのお話です。
その患者様は、70代女性の一人暮らしの方です。
「食事は普通に食べられるが、舌が痛い」という訴えでした。
他院を受診するも、
「なんともないです。気のせいだよ。気にしなくていいよ。癌じゃないから。」
と言われたそうです。
癌じゃないという言葉にほっとしていくらか症状が軽くなったのですが、
やはり時々訪れる舌の痛みは依然として続き、半年間苦しまれていたそうです。
俗に言う不定愁訴と思われ、特別な精密検査を行われずに困り当院へ受診されました。
見た目では腫瘍もできていない、明らかに悪そうな病変はない。
このような疾患を“舌痛症”と言います。
舌が痛い病気と言えば、舌癌がありますが癌は明らかな病変が見た目でわかりますので容易に見つけることが多いです。その他に体内の微量元素不足(亜鉛など)やビタミン不足またはカンジダなどの真菌感染により舌炎をよく引き起こしますが、舌痛症はそれを除外した上での診断となります。
確かにこの患者様は見た目は何もない。
血液検査上も細菌検査上も明らかな病的な結果はありませんでした。
ん~~~~~。難しい~~~~。
しかし、踏ん張ってよく話を聞いてみると!!!
この患者様は6か月前に旦那さんを亡くしたというエピソードがありました。
その後から症状が発生の時期と一致しています。
心気症の可能性を考え近医の心療内科へご紹介し、軽度のうつ病という診断でありました。
そして、抗うつ剤を1か月間内服したところ、すっかり舌の痛みが消えたとのことです。
患者様は今まで見たこともない笑顔でお礼に来てくださいました。
見た目や検査に頼らず、患者様のエピソードをきちんと聞くことも診療です。
多忙にかまけず、一人一人の話を拝聴していく姿勢を学ばせていただきました。
そして、何よりも【病気を見ずして人を見る】という言葉を改めて実感した患者様でした。
日々の診療は我々医師にとって学びの場であります。
明日から新年の診療が始まります。
この気持ちを忘れずスタッフともども元気にはりきって参りますので、よろしくお願いします!